その日はいつもと変わらない日々のはずだったとグランは思う。少しの間、星屑の街に戻るエッセルとカトルをルクレツィアと見届けて、受けていた依頼を思ったよりも順調よくこなして、予定より早く騎空艇へと戻ってきて、依頼をこなした団員達と解散した。そこまではきっといつもの日常だったと思う。
「団長」
声をかけられグランが振り向くとルクレツィアが近付いてきていた。なにか用事があるのだろうと思いグランは足を止める。
「どうしたの?ルクレツィア」
「カトルとエッセルが星屑の街に帰ってすぐで申し訳ないけれど、私も少しの間だけ団を抜けてもいいかしら?」
その意外な申し出にグランは少し驚く。ルクレツィアはこの騎空団に入って以降、星屑の街に行く用事以外でこの騎空団を抜けたことはなかったからだ。
「それは構わないけど、何かの用事なら俺も付き合うよ?急ぎの依頼もないし」
グランは直近の予定を考えるがそこまで日程が詰まった依頼などを受けた覚えは無い。それならば、全然彼女の用事に付き合うのもありだと考える。それにグランは何故かその時ルクレツィアについて行くべきだと思ったからだ。しかし、ルクレツィアはすぐに慌てて首を横に振る。
「ここから少し遠いから付き合わせるのは悪いわ。それに行きたい場所が次の依頼場所から反対方向なのよ」
グランはそれを聞いて少し悩む。グランサイファーはいくら早いとは言え、無理させるのはよくないだろう。ルクレツィアが言うのだから、彼女1人の方が騎空艇よりも身軽に動けるくらいの距離なのかもしれない。しかし、グランはそれでも何故か少しばかり迷った。こればかりは直感としか言いようがなかったが、迷いを無くそうと改めてルクレツィアに聞いた。
「何か用事があるんだよね?」
「え、ええ。その…団長達に会う前に、依頼で出会った人から久しぶりに手紙を貰ったの。たまたまグランサイファーに私が乗っているのを知ったらしくて……近くまで来ているから少し話がしたいって、この間シェロカルテさんから手紙を受け取ったのよ」
ルクレツィアが手紙を取り出してみせる。ごく普通の封筒だったが、その時封筒に描かれていた兎のような紋様が何故かグランの目に止まったが、すぐにルクレツィアは手紙をしまってしまった。確かにこの間グランがシェロカルテに会った時、ルクレツィアもいたので手紙を受け取っていてもおかしくは無いのだが、何故か違和感を感じる。しかし、これ以上引き止める理由もないグランが悩んでいるとさらにルクレツィアはグランの決断を促すような言葉を発した。
「カトルとエッセルにも一応手紙を見せて話しているから、そんなに心配しないで」
あまりにもグランが心配し過ぎていると思われたのかルクレツィアが笑っていた。その笑った彼女に少し安心したグランは彼女を送り出すことに決めた。
「そっか。わかった。用事が終わったら連絡して。近くまで迎えに行くから」
「ええ、お願い」
「気をつけてね」
「ありがとう団長」
そう言って準備をしにグランサイファーの中へ戻って行った彼女を見送って、グランもルリア達の元へと駆け出した。しかし、グランは後に酷く後悔することになる。何故あの時直感に従って意地でもルクレツィアに付き合わなかったのかと言うことを。感じた違和感を無視してしまったことを───